ワイキキ沖に900万ドルの人工リーフを設置 ― 3Dプリントのコンクリート礁を2026年末から沈める計画。毎日眺めるあの海の話
ワイキキの海の底に、人工のサンゴ礁を沈める計画が動いている、というニュースが飛び込んできました。3Dプリント(立体的にものを造形する技術)で作ったコンクリートの礁を約150個、ワイキキの沖合に並べていくそうで、費用は900万ドル。今年末から来年の初めごろに始まる予定だといいます。私たちは海に潜るわけでもシュノーケルをするわけでもないのですが、これは毎日部屋のバルコニーから眺めている、あの目の前の海の話。さすがに素通りできないなぁと思って、少し詳しく読んでみました。
ニュースのあらまし
Aloha State Daily | Artificial reef coming to Waikīkī
million NOAA project to stimulate coral restoration.
計画の中身をざっくり整理すると、こんな内容でした。
- 主導: NOAA(アメリカの海洋大気庁)の生息地保全部門、ハワイ大学マノア校、州のDLNR(土地天然資源局)の水生資源課など、複数の機関が組んで進める
- 何を沈める: 約150個の、3Dプリントで作ったコンクリート製の礁。天然のサンゴ礁のように、あちこちに穴やくぼみを持たせて、生き物が隠れたり住みついたりしやすい造りになっている
- どこに: ワイキキの沖合およそ半マイル(約800メートル)、アプアケハウ(‘Āpuakēhau)という水路の河口あたり。ケワロ・ハーバーからダイヤモンドヘッドまでの間にあった8つの候補地から選ばれた
- 規模: 広さはおよそ5,400平方フィート(約500平方メートル)
- いつ: 今年末から来年初めごろの見込み。ただし許可の取得がどれだけ早く進むか次第
- 費用: 900万ドル
- 目的: ワイキキの傷んだサンゴ礁を立て直すこと。海の生き物の住処になり、サンゴが育ち、さらにそこで育てたサンゴを他の礁へ移していく苗床にもする
背景として、ワイキキのサンゴ礁はハワイの中でも特に傷んでいる部類だと書かれていました。それもあって、今回の場所に選ばれたようです。いきなりの新しい試みというわけでもなく、2016年に先行していた取り組み(CReMEと呼ばれるプロジェクト)があって、2023年までに30以上の大きなサンゴの群れが生き残ったという実績も紹介されていました。ある程度の手応えがあったうえで、今回さらに大きく広げていく、という流れのようです。
潜らない私たちにとっても、あれは「毎日見ている海」
私たちのハワイ滞在は、そもそも海に入らないスタイルです。ダイビングもシュノーケルも、今の我が家のやることの中には入っていません。なので今回の人工リーフも、完成したところで自分の目で直接見ることは、たぶんないと思います。
ただ、海に入らないからといって、この海と縁が薄いかというと、それが全然そうでもないんですよね。私たちは滞在中、毎朝ライオンコーヒーを片手に部屋のバルコニーからワイキキの海を眺めますし、日中にビーチを散歩すれば、その海はずっと視界の中にあります。沖合半マイルというのは、まさにその眺めている海の、少し先。遠い別の場所の話ではなくて、いつも見ている水面のすぐ向こうで進む工事なんだなぁと思うと、急に身近な話に感じられました。
海に入っていたのはずいぶん昔の話で、ハワイに通い始めたころにハナウマ湾で二回ほどシュノーケルをして、ウミガメに会えたのはいい思い出です。でも今はもっぱら眺める方に落ち着いていて、海の中がどうなっているかを気にする機会は、正直あまりありませんでした。今回のニュースで、自分が毎日ぼんやり見ている水面の下に、傷んだサンゴ礁があって、それを立て直そうとしている人たちがいる、というのを改めて知った感じです。
サンゴを植えるのではなく、礁の形ごと沈めるという発想
読んでいて面白いなぁと思ったのは、その進め方でした。サンゴを一本ずつ植えていくというより、礁の形そのものをあらかじめ作って、まるごと沈めてしまうという考え方なんですよね。
しかも素材は3Dプリントで造形したコンクリート。穴やくぼみを最初から作り込んでおけば、そこに生き物が隠れたり、サンゴが根を張ったりしやすくなる、ということのようです。自然が長い時間をかけて作る複雑な形を、先に人の手で用意しておいて、あとは海に任せる。効率のいいやり方を考える我が家からすると、こういう発想には素直に感心してしまいます。
もちろん、コンクリートを沈めればすぐサンゴ礁になる、という単純な話ではないのだと思います。生き物が住みつくかどうか、サンゴが育つかどうかは、これから何年もかけて見ていくことなのでしょう。それでも、2016年の先行プロジェクトで30以上の群れが生き残ったという積み重ねがあるからこそ、今回900万ドルをかけて大きく広げる判断になったのだろうなぁと想像しています。地道に確かめながら少しずつ広げていく感じが、なんだか安心して読めるニュースでした。
それに、この場所で育てたサンゴを、いずれ他の傷んだ礁へ移していく苗床にもする、という話も気になりました。ワイキキの沖に作った礁が、そこだけで終わらずに、ハワイのあちこちの海を立て直す元手になっていくわけです。ひとつの工事が、目の前の海だけでなく、もっと広い範囲の海に効いてくるかもしれないと考えると、900万ドルという金額の見え方も少し変わってきますね。始まる時期が「許可が取れ次第」とふんわりしているのも、こういう自然相手の話らしいなぁと思いました。急いで沈めればいいというものでもないでしょうから、じっくり進んでいくのを、のんびり眺めているくらいがちょうどいいのかもしれません。
オアフの海では、直そうとする動きがいくつも重なっている
こうしてワイキキの目の前で礁を作る話がある一方で、オアフの海では別の立て直しの取り組みも進んでいます。オアフ南岸では、別の団体がコンクリートを沈めるのではなく、サンゴそのものを植えていくプロジェクトも動いていて、こちらは観光の団体まで一緒になって海の土台を支えようとしています。
海の生き物という意味では、ワイキキビーチにハワイアンモンクアザラシが上がってくる話もありました。傷んだ礁を立て直す動きと、戻ってきた生き物を見守る動きが、同じワイキキの海で少しずつ重なっている。潜らない私たちは、そのどれにも直接は関わらないのですが、眺めている海がいろんな人の手で少しずつ良くなっていくのは、滞在する立場として嬉しいものです。
次にバルコニーから海を眺めるとき
人工リーフが完成しても、私たちがその上で泳いだり潜ったりすることは、やっぱりないと思います。海に入らないスタイルは、これからも変わらなさそうです。
それでも、次にワイキキに滞在して、いつものようにコーヒー片手にバルコニーから海を眺めるとき、「あの水面の少し先で、3Dプリントのコンクリート礁が沈んで、サンゴが育ち始めているのかもしれないなぁ」と思えるだけで、同じ眺めが少しだけ違って見える気がします。奥さんに「あの辺に礁を沈めるらしいよ」と話したら、「へぇ、私たちが見てる海の下の話なんだねぇ」と返ってきて、なるほど、たしかにそういう距離感の話だなぁと妙に納得しました。見るだけの私たちにも、こういうニュースはちゃんと届くものですね。
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