ハワイ唯一の日本酒蔵「アイランダー・サケ」― ビッグアイランドで造る地酒が気になる話


ハワイのお酒というと、まず冷えたビールや、リゾートっぽいカクテルを思い浮かべる方が多いと思います。私たちも部屋飲みの主役はもっぱらビールとワインで、日本酒はどちらかというと「日本の家で、たまに」というくらいの距離感でした。そんな私たちの目に、「ハワイで日本酒を造っている蔵がある」というニュースが留まりました。しかも場所は、オアフの喧騒からずいぶん離れた、ビッグアイランド(ハワイ島)の高原だというのです。

ニュースのあらまし

ハワイ島のワイメアにあるアイランダー・サケ・ブルワリー(Islander Sake Brewery)は、ハワイ州で唯一ライセンスを持つ日本酒の蔵です。アメリカ本土まで含めても、こうした蔵は全米で約30軒ほどしかないそうで、その貴重な一軒がハワイにある、という話です。

Something’s Brewing on the Big Island

Something’s Brewing on the Big Island

At the base of Maunkea on the sunny leeward side of Hawai‘i Island, a small-batch brewery is handcrafting high-quality sake using Japanese rice, The folks at Islander Sake, the only brewery of its kind in the state, are determined to revive the once thriving art in Hawai‘i.

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HAWAIʻI Magazine

蔵があるのは、マウナケアの麓、ハプナのゴルフコースにほど近い高原エリア。2018年に開かれた、まだ若い蔵です。ハワイで日本酒、というだけでも意外なのに、それが海辺のワイキキではなく、涼しい山側にあるというのも面白いなぁと思いました。

アメリカに約30軒、ハワイでは1軒だけ

調べてみると、ハワイと日本酒の縁は意外と古いようです。州で最初の酒蔵ができたのは1908年、オアフのホノルルだったとのこと。かつては現地で日本酒が造られていた時期があったわけですが、その蔵は戦後しばらくして、1989年に幕を閉じています。

そこから約30年、ハワイの地酒は途絶えていました。それを、時代も島も変えて、ビッグアイランドで復活させたのがアイランダー・サケ、という流れになります。「一度消えたものが、別のかたちで戻ってくる」という話に、私たちはわりと弱いところがあって、これを読んだときは素直に「へぇ、そうなんだ」と手が止まりました。

蔵を率いているのは、社長でありながら自ら酒を仕込む杜氏(とうじ=酒造りの最高責任者)でもある髙橋さんという方で、世界に35人ほどしかいないという女性杜氏のひとりだそうです。共同創業者の廣瀬さんとともに、ハワイの水と気候で日本酒を醸している。数字だけ聞いても、なかなかすごい蔵だなぁと感じます。

何を造っているのか

肝心のお酒の中身も、思ったより本格派でした。定番として、すっきりした大吟醸や、うっすら白く濁ったにごり酒、さらに4年ものの熟成酒まで揃えているとのこと。熟成酒というのは日本でもそこまで日常的に見かけるものではないので、ちゃんと寝かせたお酒まで造っているのか、というのが正直な驚きでした。

それに加えて、ハワイらしさを出したフレーバー系の日本酒もあるようです。リリコイ(パッションフルーツ)や柚子、コナコーヒー、パイナップルを合わせたものなど。ここは私たちの好みがはっきり分かれるところで、我が家は夫婦そろって甘いお酒があまり得意ではないので、フレーバー系は「そういうのもあるんだぁ、お土産に喜ばれそうだなぁ」と眺める側になりそうです。自分たちで一本選ぶなら、やっぱり王道の大吟醸か、面白そうな熟成酒の方に手が伸びると思います。

利き酒ツアーと、併設レストラン「Engawa」

嬉しいのは、ただ造って売っているだけではなく、訪ねて味わえる場所になっている点です。蔵では5種類を飲み比べられる利き酒ツアーや、醸造所そのものを見学するツアーが用意されているそうです。飲み比べで自分の好みを確かめてから買える、というのは、日本酒に詳しくない私たちのような人間にはありがたい仕組みだなぁと思います。

さらに、蔵には「Engawa(えんがわ)」という懐石料理のレストランも併設されています。月替わりのコースで、席数は最大20名ほど、2部制。ここは予約制のコース料理ということで、午後からダラダラつまみながら飲む我が家の晩酌スタイルとはちょっと毛色が違いますが、造り手の蔵で、その酒に合わせた料理を出す、という組み立ては、聞いているだけで丁寧そうで良いなぁと感じます。

ビール党なのに、日本酒と聞くと弱い我が家

冒頭にも書いたとおり、私たちの部屋飲みの主役はビールとワインです。日本にいるときも、缶ビールを開けたあとはいいちこのソーダ割り、というのが定番の流れで、日本酒はどちらかというと出番の少ない方でした。それでも、「ハワイで造った日本酒」と聞いた瞬間に、なぜか急に飲んでみたくなったのが自分でも面白いところです。

正直に言うと、私たちはかなりの出不精で、滞在中もワイキキ周辺からほとんど動きません。ビッグアイランドのワイメアまで足を延ばすのは、オアフからだと飛行機に乗る話になるので、それだけを目当てに行くことはまずないと思います。ただ、私たちはヒルトンのタイムシェア(HGV)を使って長めに滞在するスタイルで、以前ハワイ島のコナで地ビールのビアガーデンが話題になったときにも感じたのですが、島を変えて長く過ごす機会がもしあれば、こういう「その土地でしか飲めないお酒」の蔵は、一度は覗いてみたい対象です。

それに、蔵まで行けなくても、ハワイ産の日本酒を一本手に入れて、部屋のキッチンで冷やして、ラナイの風に当たりながらゆっくり飲む、という部屋飲みの絵を想像すると、それだけでちょっと楽しくなります。少し前にハワイで自家蒸留の解禁が話題になったときにも思いましたが、ハワイのお酒事情は、私たちが思っているより静かに、そして着実に広がっているようです。

次に縁があったら、覗いてみたい

というわけで、今すぐビッグアイランドへ、とはならないのが我が家らしいところですが、「ハワイに日本酒の蔵がある」と知れたこと自体が、なんだか嬉しいニュースでした。ビールとワインの箱の隅に、いつか「ハワイの地酒」という選択肢がそっと増える。そんな日を、のんびり待ってみようと思います。次にビッグアイランドに縁ができたら、まずは利き酒ツアーで、王道の大吟醸から一杯いってみたいですね。

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