ワイキキ裏を流れるアラワイ運河、泥だんごで水質改善は本当に効く? 2年の研究で専門家の見解が割れる話


ワイキキのすぐ裏を流れるアラワイ運河。ここに「泥だんご」を投げ込んで水をきれいにしよう、という活動が長年続いているのをご存じでしょうか。沖縄で生まれた技術で、水をきれいにするとされる微生物を閉じ込めた泥のボールを、運河に沈めていく取り組みです。ところが最近、「それって本当に効いているの?」という点で、研究者と活動団体の見解が割れているというニュースを見かけました。アラモアナへ向かうトロリーで、いつも橋の上から眺めている運河の話だったので、私たちもつい手が止まりました。

ニュースのあらまし

話題になっているのは「Genki Ball(ゲンキボール)」と呼ばれる泥だんごです。EM(有用微生物群。水をきれいにするとされる微生物の集まり)を混ぜ込んだ泥を丸めたもので、もともとは30〜40年ほど前に沖縄で開発された水質改善の技術だそうです。これをボランティアの手でアラワイ運河に投げ入れる活動を、Genki Ala Wai Project という団体が続けています。

そこへ、ハワイ太平洋大学(HPU)の研究者が2年がかりで効果を調べた結果が出てきました。カイルアにあるハマクア湿地で調査したところ、水質の改善は確認できず、一部の指標はむしろ悪くなっていた、という内容です。一方で活動団体は「目に見える手応えがあった」「在来の魚やハワイモンクアザラシといった生き物が戻ってきた」と話しています。今回、両者が同じ場に集まって、この食い違いを話し合ったというのがニュースの中身でした。

Do Genki Balls Work? Discussions Continue

Do Genki Balls Work? Discussions Continue

Hawai‘i Pacific University scientists and leaders of the Genki Ala Wai Project took part in a symposium to discuss the effectiveness of the mud balls.

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Honolulu Magazine

トロリーの橋の上から、いつも見ている運河

アラワイ運河は、ワイキキの街のすぐ裏を流れています。とはいえ白状すると、私たちがこの運河を見るのは、ピンクトロリーでアラモアナセンターへ向かうときに橋を渡る、その車窓からくらいです。運河沿いはジョギングや犬の散歩の定番コースだと聞きますが、治安の面であまりいい話を聞かないこともあって、普段の散歩や買い出しの動線には入っていません。昼間なら実際はそこまで心配いらないのかもしれませんが、腰の重い我が家は、なんとなく足が向かないままです。

それでも橋の上から見るたびに思うのは、水の色がお世辞にもきれいとは言えないことです。観光で来ている方も、ビーチのあの透き通った海とのギャップに少し驚くかもしれません。だからこそ、この運河をなんとかきれいにしようと動いている人たちがいる、と知って、へぇ、そんな取り組みがあったんだなぁと感じました。トロリーで通り過ぎるだけの場所に、こういう物語があると分かると、次に橋を渡るときの見え方が少し変わりますね。

そもそもアラワイ運河は、だいたい100年ほど前に掘られた人工の運河だそうです。もともと湿地だったこの一帯の水を抜いて、今のワイキキの街を作るために整備された、という成り立ちがあります。流れのゆるい運河に、街じゅうに降った雨水が集まってくる造りなので、大雨のあとなどはどうしても水が濁りやすいのだとか。車窓からぼんやり眺めるだけの場所にも、それなりの歴史があるんだなぁと、今回いろいろ読んでいて初めて知りました。こうした成り立ちを踏まえると、ここを少しでもきれいにしたいと動く人が出てくるのも、自然なことなのかもしれません。

「効いている」「変わらない」で割れる見解

面白いのは、同じ活動について、立場によって受け止めがはっきり分かれているところです。ざっくり並べると、こんな感じでした。

立場見方
Genki Ala Wai Project(活動団体)在来の魚やハワイモンクアザラシが戻ってきた。目に見える手応えがある
HPU(ハワイ太平洋大学)の研究者2年間の調査(カイルアの湿地)では水質の改善は確認できず、一部はむしろ悪化していた

活動団体を紹介する立場の方は「この技術は30以上の国で使われていて、400本を超える科学論文もある」とも話していました。世界のあちこちで試されてきた方法ではあるようです。

どちらかが嘘をついている、という単純な話ではなさそうなのが難しいところです。今回研究が行われたのはカイルアの湿地で、泥だんごを投げ込んでいるアラワイ運河とは場所も条件も違います。水のきれいさをどこで測るか、何をもって「効果あり」と呼ぶかでも、結論は変わってきそうです。魚や生き物が戻ってきたという実感と、数字で測った水質とが、必ずしも同じ方向を向くとも限りません。素人の私たちが「こっちが正しい」と言い切れる話ではありませんが、こうやって数字と向き合って、立場の違う人同士がきちんと議論している、というのは健全でいいなぁと思いながら読みました。

手間のかかることを、気長に続けられる人たち

私たちはどちらかというと、何かを始める前に「それ、効果あるの?」と結果を先に気にしてしまう質です。ハワイでの過ごし方も、歩く距離を減らせないか、並ばずに済まないか、と手間の少ない方へ流れていきます。だからこそ、こういう地道な活動を何年も続けている人たちを見ると、素直にすごいなぁと思ってしまいます。泥をこねて、丸めて、運河まで運んで、投げ込んで。それをずっと、というのは、めんどくさがりの我が家には到底真似できません。

科学的にはまだ白黒がついていないようですが、効果がはっきりするより前から手を動かし続けられる人がいる、というのがハワイらしいなぁとも感じます。結果がすぐに出ないことに淡々と付き合えるのは、腰の重い我が家にはない強さです。眺めているだけの立場で言うのも気が引けますが、こういう人たちがいる街に滞在できているのは、なんだかありがたいことだなぁと思います。

それに、仮に水質の数字が思ったほど動かなかったとしても、この活動には別の意味もある気がします。多くの人が「あの運河をなんとかしたいね」と関心を持って、実際に集まって手を動かす。その過程で、それまで素通りしていた運河を、みんながちゃんと見るようになる。ふだん景色として流していた場所に目が向くきっかけになるだけでも、けっこう大きなことなのかもしれません。私たちのように、ニュースを読んで初めて「あの水、そういえば」と考え始める人間もいるわけですから。

次にトロリーで橋を渡るとき

次にピンクトロリーでアラモアナへ向かう途中、アラワイ運河の橋を渡るとき、車窓から水の色をほんの少しだけ気にして見てみようと思います。すぐに変化が分かるものではないでしょうし、そもそも効果があるのかどうかも、まだ議論の途中です。それでも、あの泥だんごが今日もどこかで運河に沈んでいるのかもしれない、と思いながら通り過ぎるだけで、いつもの車窓の景色がちょっと違って見えそうです。

ハワイのニュースというと、フライトやホテル、グルメの話に目が行きがちですが、こういう地元の地道な取り組みを知るのも、滞在の楽しみのひとつだなぁと改めて思いました。

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